- 2009年3月 9日 14:31
- 動物
北海道のラッコ、なぜか増加中...カニ・ウニなど漁業被害もより
釧路市の幣舞橋に現れたラッコの「クーちゃん」。
珍現象として注目されているが、北海道にやって来るラッコは今後さらに増える可能性があるという。漁業被害を心配する声もあり、研究者らは、北方4島にある繁殖地の調査を急ぐべきだと訴えている。
◆目撃件数は増加◆
明治以前の北海道でラッコは珍しい動物ではなかった。「ラッコ」という言葉はアイヌ語起源であり、道内の遺跡からラッコの骨も見つかっている。また、江戸時代に北海道を探検した松浦武四郎の文献にも登場する。しかし、毛皮を求めて乱獲され、20世紀初頭には北海道から一時期姿を消したとされている。
道内で再び目撃されるようになったのは1980年代からだ。90年代半ばからは根室市の納沙布岬を中心に目撃数が急増。7年前からは襟裳岬にも定着しており、ラッコの出没は珍しい現象ではなくなった。
ただ、警戒心が強いラッコが、人の多い街中の川に現れることは、めったにない。ラッコの専門家で水産総合研究センター北海道区水産研究所の服部薫研究員はクーちゃんについて、「人慣れしすぎており、特異な例だ」としている。
◆増えすぎ?餌枯渇?◆
道内の太平洋岸にラッコが現れるようになった理由の一つとして、歯舞群島などで個体数が増え、分布域を広げているとの説がある。服部研究員は、「このまま増えれば、もっと頻繁に北海道に来るようになる。今後、道内漁業との摩擦も考えられる」と懸念する。
というのも、ラッコは一部漁業者にとって厄介な動物だからだ。えりも漁協では2003年、放流した約4トンの養殖用ウニがラッコの食害で全滅した。ラッコは貝だけでなく、カニやウニも食べる。1日に食べる量は体重(成獣で約40キロ)の20~33%という大食漢だ。
しかも、ラッコが漁網を破ったり、養殖のホタテを食い荒らしたりしても、漁業者には講じる手段がない。国際的な絶滅危惧(きぐ)種であるラッコを捕獲することは、臘虎膃肭獣(らっこおっとせい)猟獲取締法で禁じられている。03年の被害の際も、えりも漁協では養殖場を他へ移すしかなかった。
一方、4島でカニやウニが激減し、餌を求めて来遊している可能性も指摘されている。現に、根室税関支署によると、昨年、ロシア船による花咲港へのカニの輸入量は前年比で61%も減っている。
◆カード問題も調査の壁に◆
昨年7月の日露首脳会談で、オホーツク海の日露近隣海域などでの「生態系保全プログラム」として、北方4島で両国研究者が共同調査を行うことを合意した。実現すれば、ラッコの繁殖の実態も明らかになる。
調査はビザなし交流事業の枠組みで行われる。しかし、ロシア側は4島へ上陸する日本人に「出入国カード」の提出を求めているため、このままではプログラムが実行できない。カード問題の早急な解決は、ラッコの保護管理を進めるためにも必要だ。
東京農大生物産業学部(網走市)の小林万里講師は、「餌の枯渇か、個体の増えすぎか、繁殖地を見ることができないのでわからない。現地を調査しないと、何の手も打てない」と話している。